完璧な履歴書を持つ候補者と、困難を戦い抜いてきた候補者のどちらかを選ぶことになったとき、人事部長のレジーナ・ハートリーは常に「闘士」にチャンスを与えると言います。自身逆境を生き抜いてきたハートリーは、最悪のところから這い上がってきた人には変化し続ける仕事環境を耐え抜ける力があると知っているからです。彼女はアドバイスします。「過小評価されている候補者に目を向けてください。彼らの秘密の武器はその情熱と目的意識です。闘士を採用しましょう」
引用:レジーナ・ハートリー: 最高の人材の履歴書が必ずしも理想的でない理由 | TED Talk | TED.com
人材として、「履歴書に非の打ち所がない人のみが価値がある」という考えを否定するTEDトークです。転職暦が多数あっても、変な経歴が混ざっていても、そんな人たちだからこそできることもある、価値があると言っています。
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目次
トーク内容まとめ
あなたの会社では空いたポストの求人を始めました
人材としては適格であっても、正反対の履歴書の二人、どちらを採用するべきか
Aさん:一流大卒で成績優秀、完璧な履歴書に素晴らしい推薦文の数々。非の打ちどころがない
Bさん:二流大卒で転職歴多数、レジ係や「歌うウエイトレス」みたいな変な職歴がある。
うちの部署ではこの対照的なタイプの候補者を表す正式な名称がある。
Aさん:「silver spoon: 銀のスプーン」明白な優位性があり、成功を約束されているような人物
Bさん:「scrapper: 闘士」同じ地点に到達するためにきわめて困難な条件を戦い抜いてきた人物
履歴書はその人物のストーリーを語る
長年の経験からパッチワークキルトのような経歴を持つ人の履歴書を放り出さずに、よく検討するようになった。
一般的には、半端な経歴の連続は集中力の欠如や一過性のなさを表していると言われている。しかし一方では困難と闘っていた期間であったかもしれない。少なくとも「闘士」とは面接してみる価値がある。
「銀のスプーン」に文句がある訳ではない。難関大学に合格し、卒業するには多くの犠牲と努力が必要である。ただ、彼らは困難に対して立ち向かう経験と能力は「闘士」に比べて欠如している。なぜならばそれまでが成功を前提とした人生であったからだ。
「銀のスプーン」の中には「自分にふさわしくない仕事」があると考えている人もいる。
→実際、ある人(銀のスプーン)に仕事のプロセス理解のため、単純な手作業をやらせたら、彼は仕事をやめた。
・逆に敗者の人生を運命付けられたような人が、成功を勝ち取っていたらどうだろう。
ぜひそういう「闘士」と面接することをオススメする。
なぜなら私も「闘士」の一人であり、彼らのことはよく知っているから。
私の父親が妄想型統合失調症と診断されたことにより、聡明であるにも関わらず仕事を続けることができなくなった。そのため母はシングルマザーとして5人の兄弟を育ててくれた。少女時代は治安の悪い地域で育ち、洗濯機や電話機がない生活をしていた。
その後、私は学費を払うために歌うウエイトレスをした。
トラウマが与える影響の有無
・成功した実業家と会ったり、優れたリーダーたちの経歴を読んで気づいたことがある。
→彼らの多くが若くして苦難の時期を経験していた。(虐待、育児放棄、貧困、学習障害、アルコール依存、暴力など。
・伝統的な考え方ではトラウマは後の人生に影響を与え、機能障害や人生を困難のものにすると言われている。
しかし機能障害の研究が進むと調査データから予期せぬことが明らかになる。
→最悪の状況においてさえ、人は成長し変貌を遂げうる。これを科学者は「心的外傷後成長」と名付けた。
→リスクに対してその後に与える影響の研究では、最も過酷な経験をした子供698人のうち、1/3以上が健康に成長し、生産的な人生を送っている。
困難な状況であるにも関わらず成功している人々が1/3もいる。
世界で最も有名な成功者の一人 スティーブ・ジョブズの履歴書
- 両親から養子にだされた。
- 大学中退
- 転職暦多数
- 1年間インドに滞在
- 識字障害
成功者の識字障害率の高さとそのことがもたらした結果
調査対象となった米国の企業家は、35%が識字障害を持っていた。
これらの企業家の中には「自分の学習障害は長所」「望ましい欠陥」と考えている人もいる。
→おかげで良い聞き手となり、細部に注意を払うようになったから。
彼らは、今の自分があるのは逆境のおかげで、それらがあったからこそ困難に立ち向かう力や根性が身についたと理解している。
「逆境にも関わらず成功した」とは考えていない。
ある闘士の軌跡
同僚の一人は 1966年に起きた中国の文化大革命によって人生を完全にひっくり返された。
13歳の時に両親が地方の農村地区に飛ばされ、学校は閉鎖になる。それから北京にたった一人残され、自活を余儀なくされた。
そして16歳で縫製工場の職を得る。彼は運命を受け入れる代わりにいつか学校に戻ることを誓う
11年後政治状況が変化した時、彼は競争率の高い大学入試の話を耳にした。
→受かるためには中高のカリキュラムを3か月でマスターする必要がある。
仕事 → 帰宅して仮眠 →午前4時まで勉強 → 仕事
上記サイクルを3ヶ月間毎日繰り返し、合格した。
その後、彼は大学院を出て修士号を取得し、2人の娘も米国の大学(コーネル大学、ハーバード大学 )を卒業した。
「闘士」が動かされるもの
完全にコントロールできるのは自分だけという信念によって彼らは動かされている。
物事がうまくいかない時彼らは自問する「もっとうまくやるにはやり方をどう変えたら良いか?」
「闘士」には ある種の目的意識があり、簡単にはくじけない。
彼らがこれまで直面してきた苦難に比べれば仕事の困難はなんてことない。
→貧困や狂った父親や、度重なる強盗との遭遇を生き抜いていた彼らは言うだろう。「仕事上の困難だって!?」「本気で言っているの? そんなの何でもない。まかせろ」
「闘士」が経験上大切だと知っていること
・ユーモア感覚
→「闘士」は困難をユーモアで切り抜けられること、笑いがものの見方を変えてくれることを知っている。
・人間関係
→逆境に打ち勝った人々は単独で成し遂げているわけではない。
成功への道のりのどこかで彼らは自分の長所を引き出し、自分の成功に投資してくれる人に出会っている。
どんな時でも頼りにできる人の存在が逆境に打ち勝つ為には必要なのである。
→私もこれまでの人生で多くの人々に出会い、彼らは本音で私に対して意見やアドバイスや指導をしてくれた。
彼らは私がかつて学費を払うために歌うウエイトレスをしていたことなんて気にしていなかった。
大事なヒントと最初の質問について
多様性とインクルーシブな実践に取り組む企業は「闘士」タイプを支援し、業績も優れている傾向がある。
DiversityInc誌の調査によれば多様性において、上位50位に入る企業はS&P 500を利益率で25%上回るという結果が出ている。
皆さんはどちらに賭けますか? 「silver spoon:銀のスプーン」か「scrapper:闘士」か?
私は過小評価されている候補者を選ぶべきだと言いたい。彼らには情熱と目的意識という隠れた武器がある。
「闘士」を雇いましょう。
まとめ・感想
トーク内では「silver spoon」「scrapper」と称したがのが適格で、よい表現をすると思いました。
日本では「キャリア」「叩き上げ」が似ているのかと思いましたが、「叩き上げ」は一からキャリアを築いた人のことを指す様なので少し異なりますかね。
ハートリーさんは苦難を闘ってきた人たちのことを全て「闘士」と称し、そのことを評価しようとしています。苦難は人それぞれ。共通しているのは、みんな困難を受け止め、「どうしたらいいのか」を考え、実行してきた人たちだということ。採用において過小評価されてしまいがちだということ。
例えば進学のときに学費のことを憂いだことのある人は、そうでない人たちとは違うものを持っているということ。持たざるものにしかわからないこともありますよね。
「銀のスプーン」な人生”ではない” 人たちがどんな状況に置かれていたのか、彼らの思うことなどを取り上げていてとても興味深く思います。
現代の社会人は自分の経歴に奇妙な内容が加わることを病的なまでに恐れていると感じます。それはやはりみんな「銀のスプーン」に近づきたいから、そして実際にそうでないと評価してもらえないからなのでしょう。
彼女は「闘士」の価値を主張してくれています。「闘士」に属することを認めてくれてもいます。素晴らしいTEDトークでした。
興味の移り変わりや複数の転職歴に対しては、別のTEDスピーチで話題にしていました。興味が移り変わるのは話は悪いことではなく特性の一つであり、強みになることもあると言っています。