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世界で日本人が一番多い過眠症、ナルコレプシーに関係あること、ないこと。

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睡眠について 今一度考えてみて欲しい ~part1~

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私は睡眠障害のうちの一つ、ナルコレプシーに罹患しています。そのため、睡眠についてよく考えます。そして現在の研究成果や、「眠り」そのものについてなどの情報を探してしまうのです。

そんな中、非常に興味深いスピーチと遭遇しました。過眠勢だけでなく、睡眠に問題の多い現代人にはぜひ一読していただきたい内容です。20分のスピーチの上、内容を抜粋し難かったので長くなりました。そのため2回に分けて紹介します。

 

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目次

 


トーク内容まとめ (一部割愛 有)

www.ted.com

Why do we sleep? | Russell Foster

 

人生と睡眠

平均して人は人生の36%を寝て過ごす。つまり90歳まで生きるとして、丸々32年間を眠りに費やすわけである。
 
→ この32年という時間からも 眠りが ある程度重要だと分かる。しかし、ほとんどの人は眠りについて あまり考えず、ただ寝て終わる。今日は皆さんの眠りに対する見方や 考え方を変えていただきたい。
 
 

引用まとめ

蜜のように甘い眠りを存分に楽しめ」『ジュリアス・シーザ』/ シェークスピア

 

おお眠りよ。安らかな眠りよ。自然の乳母であるお前を何故驚かせたりしようか」  『ヘンリー四世』第2部〕/シェークスピア

 

眠りは黄金の鎖であり、健康と我々の身体を結びつけるもの」 トーマス・デッカー (エリザベス朝時代、劇作家)

 

上記から400年経つと眠りに関するトーンは変わってくる。

眠りは 時間浪費の罪であり 原始時代からの負の遺産である」トーマス・エジソン(20世紀初頭)

 

1980年代

眠りは弱虫のもの」マーガレット・サッチャー

金は眠らない」『ウォール街』/ゴードン・ゲッコー

 

眠りについての意識

≪20世紀 私たちは眠りにどう対応しただろうか?≫

エジソンの電球を使い 夜を侵略し 闇を占領して、その占領下で私たちは眠りをほぼ病気のごとく扱った。眠りを敵としたのだ。

今でも せいぜい睡眠欲を満たすのがいいところで、最悪の場合 たぶん多くの人は眠りを ある種の治療が必要な病気と捉えている。眠りに関する無知は本当に根深い。

 

≪なぜ眠りを頭から追い払ったのだろうか?≫

それは寝ている間には 何もしていないように見えるから。だから眠りは時間の無駄なのだろうか? それは違う、眠ることは 私たちの生態上 本当に重要なことだ。 神経科学ではなぜそれが重要なのか 解明し始めている

 

脳について

人が眠っているときも この脳は眠らない。 むしろ場所によっては脳の活動は 睡眠状態にあるときの方がより活発になる。

眠りは脳内の一つの組織から起こるのではなく、ある程度はネットワークによるもの。

 

≪視床下部の下にある組織の一つ、体内時計

体内時計によって私たちは いつ起きたらいいか いつ寝たらいいか分かる。 この組織の役割は視床下部、外側視床下部や 腹外側視索前野の 全ての部分と連携を取ること。これらが一緒になって、ここの脳幹まで投射を送る。脳幹は 前方位に指令を送り、大脳皮質を神経伝達物質で満たし、私たちを起きた状態にする。つまりは意識を与えてくれる。

眠りが起こるのは脳内で様々な相互作用がされた結果で、つまり眠りがオン・オフされるのは ここでの相互作用の結果なのである。

 

 

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眠る理由

科学者の間では何十もの学説があるので、そのうちの3つについて紹介する。

 

1. 眠りは疲労回復 説

本能的なものである。要するに日中の活動で使い尽くしたものを、私たちは夜に回復し置き換え、再建する。

実際 こうした考え方は 2,300年ほど前のアリストテレスにまでさかのぼる。 流行り廃りはあったが、今は有力になっている。

脳の中にある多くの遺伝子は 睡眠中だけオンの状態になり、それらは回復と代謝経路に結びついているとされる

 

→以上のことより、この回復説には十分な証拠がある。

 

 

2.エネルギー温存 説

消費カロリーを減らすために眠るというもの

夜に眠った場合と、夜起きて あまり活動しなかった場合を比較した結果。 眠ることで節約できたエネルギー消費は一晩で110カロリーである(ホットドッグのパンと同じカロリー)

→ エネルギー温存説はあまり説得力がないと思う。

 

 

3. 脳の情報処理と記憶定着のため 説

何かを覚えようとした後、眠らないでいれば 学習能力は壊滅的になる(かなり弱められる) というもの。そのため睡眠と記憶定着もとても重要である。

複雑な問題への新しい解決策を見つける能力は 一晩寝ることで大きく高まる。 事実、3倍も違うと言われている。夜に眠ることで創造性が高まるのである。

 

脳の中では 神経結合のうち重要なもの、つまり重要なシナプス結合は増強されるが、一方で重要度が低いものは 徐々に結合が弱まり さらに重要性を失っていく。

 

 

≪眠るのは怠慢ではない。簡単に理解できるような類のものでもない

眠りは かつてエコノミークラスから ビジネスクラスへのアップグレードに例えられていた。 エコノミークラスからファーストクラスではない。ここが肝心なのだが、眠らなければ離陸することはない、つまり 目的地に到達することはない。 今日の多くの社会において際立っているのは、私たちがひどい睡眠不足だということ。

 

 

睡眠不足について

社会の大部分が睡眠不足に陥っている。

 

時代と睡眠時間

1950年代→ ほとんどの人が8時間睡眠

 

今 → 平均して毎晩6時間半

    → 多くの子ども  学校のある日は5時間 (この年齢で脳がしっかり活動するには9時間の睡眠が必要

    →お年寄り  一晩で5時間未満 (お年寄りはまとめて眠る能力が衰えて 何回にも分けて寝ることになる

 

≪交代勤務の人について≫

たぶん 労働人口の20%が交代勤務だが、体内時計は 夜勤にあわせて 調整されない。

夜勤労働者の場合眠りの質は、通常とても悪くまた5時間くらいだろう

 

明暗サイクルは皆同じ

そのため夜勤を終えて家に帰って、どんなに疲れていて日中に眠ろうとしても 体内時計は こう告げる「起きろ。起きる時間だ」

 

 

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マイクロスリープ

脳がすることの一つ

非自発的に眠りに落ちることで 自分ではコントロールできない

 

≪マイクロスリープの危険≫

・ドライバーの31%が 一生に一度は運転中に居眠りをする

→ 高速で起こった事故のうち10万件が 疲労や注意散漫 居眠りと関係があると言われている

 

・チェルノブイリでの悲劇や スペースシャトルチャレンジャー号での 惨劇

→事故後の調査では 過酷な交代制勤務による判断力低下 注意散漫や疲労が 大きな原因とされた

疲れて寝ていないときは 記憶力も創造性も乏しくなり、衝動的に行動しやすくなり、全体的に判断力も鈍る

 

 

脳を覚醒させるもの

脳が疲れていたら、覚醒させるものを欲する。ここでドラッグや興奮誘発剤(カフェイン、ニコチン)が出てくる。

上記のものを使い、眠る時間に興奮状態だったら、今度はアルコールを使ってしまう。

これは短期的に ちょっと落ち着くのに使うにはとても便利である。眠りに入りやすくしてくれる。しかし覚えておかないといけないのは、アルコールでは睡眠どころか それに近い状態にもならない。単に落ち着くだけである。むしろ 記憶定着と想起のときに起こる 神経活動を害することもある。

 

アルコールは短期的な荒療治なのだ。お願いだから毎晩 眠るために アルコールに頼るようにならないでほしい。

 

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まとめ

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・90歳まで生きたとしたら、32年間を眠りに費やしたことになる

→このことから眠りはある程度重要なものであるとわかる

 

・20世紀、私たちは眠りをほぼ病気のごとく扱った。 眠りを敵とした

たぶん多くの人は眠りを ある種の治療が必要な病気と捉えている。:寝ている間には 何もしていないように見えるから。

  

人が眠っているときであっても、脳は眠らない

場所によっては脳の活動は 睡眠状態にあるときの方がより活発になる。

眠りが起こるのは脳内で様々な相互作用がされた結果である。

 

・なぜ眠るのか 数十の説があるが、細かいことはさておき おそらく眠る理由は複数ある

眠るのは怠慢ではない。簡単に理解できるような類のものでもない。

 

・現代では社会全体が睡眠不足の状態にある。60年前よりも睡眠時間は減っている

 

疲れて寝ていないときは 記憶力も創造性も乏しくなり、衝動的に行動しやすくなり、全体的に判断力も鈍る

→自動車や、原発など あらゆる事故の原因になりうる。

 

・脳が疲れていたら、脳を覚醒させるものを欲する。そして眠るときになったらアルコールを使用することにもなる

アルコールでは睡眠どころか それに近い状態にもならない。むしろ 記憶定着と想起のときに起こる 神経活動を害することもある。短期的には荒療治なのである。

 

 


おわりに

400年前は睡眠に対して後ろ向きなイメージは持っていなかったけれど、時代と共に意識が変わっていったとは、なんと嘆かわしい。きっと今と比べたら昔の方が、もっとずっと時間に対して穏やかだったのだろうと推察します。

 

眠るのは怠慢ではない。簡単に理解できるような類のものでもない。というところにはひどく納得しました。簡単に理解できるようなものならば、我々の病気は既に解明され、眠気に怯えない穏やかな生活を既に送っていることでしょう。

 

sleep is not an indulgence.
It's not some sort of thing that we can take on board rather casually.
眠るのは怠慢ではありません。
簡単に理解できるような類のものでもありません

 引用:ラッセル・フォスター: なぜ人は眠るのか? | TED Talk | TED.com

 

 


次回

  • 睡眠不足の弊害
  • ストレスの弊害
  • どうすれば十分な睡眠か分かるのだろうか?
  • よく眠るためには
  • 睡眠の迷信について
  • 神経科学の最新研究について【メンタルヘルスと精神疾患、睡眠障害との関係 】
  • 研究により得られた成果

 

 


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