コカインからスマートフォンまで―「依存症」を引き起こすものとは一体何でしょう?どうしたら依存症を克服できるのでしょう?現在行われている対策が失敗し、愛する人々が薬物中毒に苦しむ様子を自分の目で見てきたジョハン・ハリは、なぜ依存症にこういう対応をするのか、もっと良い方法はないのかと疑問を持ちました。この人類長年の問題ともいえる命題の探求のため世界を旅して彼が得た意外な捉え方や明るい見通しを、非常に個人的なトークの中で紹介します。
上記リンク紹介引用ジョハン・ハリ: 「依存症」―間違いだらけの常識 | TED Talk | TED.com
依存症について私たちの常識はほとんどが間違いである
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目次
内容抜粋
ドラッグと、その危険性について
アメリカで薬物が違法になり、薬物中毒者には重大な罰を与えて苦しめようと決断してから100年
《この100年間のドラッグへ対する認識と疑問》
ヘロインは依存性物質が含まれている そのため、一定期間継続的に摂取していると生理的に求めずにはいられなくなってしまう。
→この説に対する疑問
・事故で入院し、一定期間痛み止めを打たれていたとしても退院した後にヘロイン中毒にはならない
・病院で痛み止めとして利用されている ジルセチルモルヒネにもヘロインが含まれている
→街の売人が売っているものよりも化学的には混じりけもなくいい物質である
・上述の説が本当であるならば、入院期間中の20日間、1日3回モルヒネを打たれると薬物中毒になってしまうのではないか。
→しかし、実際にはそんなことにはならない
《ネズミに対する薬物依存の検証実験への見直し》
20世紀中期に行われた実験
・ネズミをオリに入れ、何も混ぜられていない水、ヘロインかコカインの入った水を用意する
→ネズミは じきにドラッグの入った水しか飲まなくなり、100%自らを死に追いやってしまう
70年代にとある教授が気づいたこと
・ネズミが入っているオリには何も入っていない
→水を飲む以外にすることがない。なのでドラッグ入りの水が選択されているのではないか
・環境を変えて改めて実験
→トンネルや、エサもたくさんある。仲間もたくさんいる。「ネズミの楽園」に再び2種類の水を置いた
・結果、「ネズミの楽園」ではドラッグ入りの水はまったく飲まれなかった。衝動的に飲むネズミもいなかった。
・ネズミが幸せに社会生活を営む中、ドラッグを飲んだのは0%だった
《同時期の人間に関する検証》
・ベトナム戦争の兵士 20%はヘロインを大量使用していた
・終戦後、ヘロインを大量に取っていた兵士達は国の機関によって追跡調査を受けた
→結果、兵士たちに更生施設は必要なく、禁断症状も出なかった
・95%がドラッグを止めた
《この結果から依存性について考え直す》
・依存性物質が問題ではないのかもしれない
・「依存」の根本的原因は「オリ」にあるのではないか
・依存症は環境への適応反応だとしたら、「依存症」と呼ぶこと自体が間違っているのではないか
《依存の原因になっているものは》
・人は他人と触れ合いたいと自然に求めてしまう。
・それが人間以外につながりを求めようとした結果、何かに依存してしまう
→ギャンブル、ポルノ、コカイン、マリファナなど
・何かとつながろうとするのが人間の本能である
仮定の話
今TEDスピーチの会場にいる人たちは、おそらく半年間ウオッカを飲み続ける生活をすることもできるがそれをしないだろう
誰かに止められている訳ではなく、大事にしたい人間関係があるから。周りとのつながりがあるからではないか
国の対応、対策の違い
《アメリカやイギリスなど世界中の多くの国》
・薬物中毒が悪であり、薬物に手を出さないように注意喚起している
・薬物中毒者は社会から隔絶しようとする
→出所しても、罰せられ、さげずまれ、前歴をつけられ、再び人と繋がれないような障壁を作ってしまう制度
・一旦薬物依存になってしまうと、その後まっとうな仕事に就くこともできなくなる
《ヨーロッパで唯一ドラッグが合法である国、ポルトガル》
人口の1%がヘロイン中毒者であることに危惧した、この国が行った対策
・「今まで依存症患者を社会から切り離し阻害するために使っていた予算を、社会復帰できることに使う」
→依存症の人に雇用機会を与える、起業したい依存症患者への小額融資
・働けるまでに回復したら、仕事を紹介する。企業には、この人を1年間雇用したら給与の半分は国が持つなど
・目標は国中の依存症の全員が朝起きてベッドから出る理由をもたせること
・この実験を始めてから15年経った今、注射器系の薬物使用は50%減った、すべての薬物に関連するデータの数値は減少した
現代社会と依存について
・現代には、薬物依存の他にもスマートフォンやギャンブルなどに依存している人は少なくない。
→それは何かとつながりを持っていたいから。
・人生の大変な局目にて、傍にいるのはツイッターのフォロワーではない、
立ち直らせてくれるのはフェイスブックの友だちではない
顔を合わせた付き合いでお互いを知り尽くし、深い人間関係を持つ生身の人間であるはず
・頼れる友人の数についてのアンケートを行ったところ、1950年よりその数は右肩下がり。代わりに一人の床面積は右肩上がり
・現代は、床面積を増やし、友人の数を減らし、物欲を求めた結果、人類史上最も孤独な世界が出来上がった
・社会全体の立ち直りにも、もっと注目すべきである
・多くの人のつながりは「ネズミの楽園」とはかけ離れている
→他に何もない孤独のオリのようになってしまっている
どうしたらポルトガルのようになれるのか
・全ての人に一貫したやり方ではないが、依存症の人にこう言ってあげること
「あなたともっと深く関わり合いたい」
「なぜならあなたのことを愛している、独りになったり、孤独を感じて欲しくないから」
I want to deepen the connection with them,I love you whether you're using or you're not.
I love you, whatever state you're in, and if you need me, I'll come and sit with you
because I love you and I don't want you to be alone or to feel alone.
あなたともっと深く関わりあいたい、何かをやっててもそうでなくても大切に思っている。
しらふでもそうでなくても大切な人に変わりはないし、必要なときは駆けつけて一緒にいてあげる、
だって愛する人を一人ぼっちにしたくないし、孤独に感じて欲しくないから。
引用: TEDトーク原文、翻訳
・「君は一人じゃないよ、君は愛されているんだよ」と依存症患者には全次元においてこういう意識で対応すべき
・TV局で作られていた番組のように、依存しているものをやめるか、家族との縁を切るかが天秤にかけるようなやり方では上手くいかない
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まとめ
・「依存症」の対極にあるのは「しらふ」ではない。
・「依存症」の対極は「繋がり」である
感想
昨今、多くの人が歩きながらスマートフォンを操作するのもこれに入るのかと思考しました。あれは常にスマホの画面を見つめていたい「スマホ依存」ですよね。
ドラッグにかぎらず依存症には全レベルで同じことがいえるという意見は、革新的だと思いました。
ポルトガルの国としての目標「全依存症に朝ベッドから起きる理由をもたせること」これには感銘を受けました。確かに理由がなくても生命活動を続けることはできるけれど、人間は生きている限り行動に理由が欲しいものです。逆に言えば、これまでの依存症に対する考え方によって、彼らからはそれが奪われてきたことをより如実に表していることだと思いました。
オンライン上は、それはそれで役に立つこともあります。距離の問題を取り払ってくれたり、こうして意見を発信することもできますから。でもやっぱりそれだけになってしまうとしたら、やはり寂しい。このスピーチを見る前から生身の人間との交流も大事にしているつもりでしたが、これからもっと大事にしていきたい。
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